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インプラント前歯1本の費用相場と内訳|見た目・機能性も解説

前歯は、会話や笑顔の際にもっとも目に入りやすく、見た目の印象を大きく左右する歯です。さらに、発音や咬み切る動作にも関わるため、1本失うだけでも日常生活にさまざまな影響が出ます。

失った前歯を補う治療法の中でも、自然な見た目と噛み心地を両立できるのが「インプラント治療」です。周囲の歯を削らずに単独で機能を回復できる点から、多くの方が選択肢に挙げます。しかし、「前歯のインプラントは審美性が求められるぶん、奥歯より費用が高いのでは?」と不安に思う方も少なくありません。

実際の費用は、インプラントの種類や素材、色合わせの精度、歯ぐきの形態修正や骨造成の有無などによって変動します。この記事では、大阪でインプラント治療を専門的に行う帝塚山スマイルデザインクリニック、院長の岩下が、前歯1本のインプラント費用相場や内訳、他治療法との比較、費用を左右するポイントまで、専門的な視点で詳しく解説します。

前歯インプラント1本の費用相場

前歯のインプラント治療は、見た目と機能性の両立が求められるため、奥歯よりも高い精度と繊細な技術が必要です。その分、費用もやや高くなる傾向があります。全国的な相場は35万〜60万円程度で、インプラント本体・アバットメント・被せ物(クラウン)に加え、診断や手術、仮歯などの費用が含まれます。

インプラント治療は原則として保険適用外の自由診療であり、全額自己負担となります。一部の特殊な症例(先天欠損や外傷による広範囲の欠損など)では保険適用の可能性がありますが、一般的なケースでは適用されません。したがって、同じ「前歯1本のインプラント」でも、医院や治療方法によって総額が大きく異なるのが現状です。

さらに、前歯は笑ったときや話すときに自然に見える色調や歯ぐきのラインを再現する必要があるため、奥歯よりも細部までの色合わせや審美的な形態調整が必要になります。これらの審美性を追求する工程は追加費用の発生要因にもなります。

平均費用と価格帯の幅

前歯1本のインプラント治療費は、全国平均で35万〜60万円前後が目安です。比較的シンプルな症例であれば35万〜40万円程度で収まることもありますが、審美性を重視した精密な色合わせや、歯ぐきの形態を整える処置を伴う場合は50万円を超えるケースも珍しくありません。

費用の幅が大きい理由は、使用するインプラントメーカーや素材、治療の難易度、付随する追加処置の有無などが異なるためです。例えば、世界的に実績のあるインプラントメーカーを採用している医院は、パーツの精度や将来の部品供給面で優れていますが、その分コストが高めになります。また、前歯の場合は見た目の自然さを追求するためにセラミックやジルコニアといった高品質素材が選ばれることが多く、素材選択も費用を押し上げる要因です。

加えて、手術の難易度も価格差を生む要因です。特に前歯は骨や歯ぐきの状態によって審美的な仕上がりに大きな差が出るため、骨造成や歯肉移植などの前処置が必要になる場合があります。これらの処置が加わると、治療費が数万円から十数万円単位で上乗せされることになります。

前歯ならではの追加費用要因(色合わせ・審美設計)

前歯のインプラント治療では、奥歯以上に審美性が重視されます。そのため、人工歯の色や形を周囲の歯と違和感なく調和させるための工程や技術が、費用を押し上げる要因となります。

まず大きいのは色合わせ(シェードテイキング)です。単に白い歯を作るだけではなく、隣接歯の色調や透明感、光の反射具合まで精密に再現します。技工士が患者様の口元を直接確認したり、特殊な撮影機材で細部の色を記録することもあり、この工程には高い技術力と時間が必要です。

次に、審美設計の工程があります。前歯は笑ったときの歯並びや歯ぐきの見え方が印象に直結するため、クラウンの形態や歯頸部(歯と歯ぐきの境目)のラインを微調整します。場合によっては、歯ぐきのボリュームやラインを整える歯肉移植歯肉形成術を行い、人工歯が自然に見える環境を作ります。

さらに、治療期間中も見た目を保つために高精度な仮歯を用意することがあります。この仮歯は単なる保護目的ではなく、歯ぐきの形を整えたり発音の確認を行う役割も持ちます。これらの工程は奥歯にはあまり必要ありませんが、前歯ではほぼ必須となるため、その分の費用が加算されるのです。

費用内訳とそれぞれの役割

前歯1本のインプラント治療費は、「インプラント本体」「アバットメント」「被せ物(クラウン)」の3つが中心となり、さらに診断や仮歯などの付帯費用が加わって構成されます。これらはそれぞれ役割が異なり、どれか1つを省いたり簡略化すると、耐久性や審美性に影響が出る可能性があります。

インプラント本体(フィクスチャー)は、歯の根の代わりに顎骨に埋め込むチタン製の人工歯根で、治療の基盤となる部分です。アバットメントは、その人工歯根と人工歯をつなぐパーツで、特に前歯の場合は金属色を遮断し歯ぐきの透けを防ぐ「審美用アバットメント」が用いられることが多くなります。被せ物(クラウン)は見た目や噛み心地を左右する部分で、素材によって価格も仕上がりも変わります。

さらに、これらの主要パーツ以外にも、初診時の診査・診断、CT撮影、型取り、手術費用、治療期間中に使用する仮歯など、複数の工程が費用に含まれます。前歯の治療では、特に仮歯の精度や調整回数が多くなる傾向があり、この部分の費用も全体に影響します。

インプラント本体(フィクスチャー)費用

インプラント本体(フィクスチャー)は、顎骨に埋め込まれる人工歯根で、前歯のインプラント治療の土台となる重要なパーツです。素材には生体親和性の高い純チタンやチタン合金が使われ、骨と結合(オッセオインテグレーション)することで、長期間安定した支持力を発揮します。

前歯におけるフィクスチャー費用の目安は15万〜25万円程度です。採用するインプラントメーカーや製品シリーズによって価格は変動し、世界的に長期実績のあるメーカー製品はやや高額になる傾向があります。高品質なフィクスチャーは精度や耐久性、部品供給の安定性に優れ、将来的なメンテナンスや修理にも安心感があります。

また、前歯は奥歯に比べて顎骨が薄く、埋入位置や角度の調整が難しい部位です。そのため、骨幅を確保するための骨造成や、より細径のフィクスチャーを選択することもあります。こうした条件によっては追加費用が発生することもあり、単純に「フィクスチャー代=全額の半分程度」とは限りません。費用の内訳を確認し、必要な処置や素材のグレードを事前に理解しておくことが大切です。

アバットメント費用(前歯特有の審美用アバットメント)

アバットメントは、インプラント本体(フィクスチャー)と被せ物(クラウン)を連結する中間パーツで、見た目と機能の両面で重要な役割を果たします。前歯の場合、歯ぐきから透けて金属色が見えるのを防ぐため、審美用アバットメントが用いられることが多く、奥歯よりも高額になる傾向があります。

審美用アバットメントには、ジルコニア製やチタン+セラミックコーティング製などがあり、価格は5万〜10万円程度が目安です。特にジルコニア製は白色で光の透過性が高く、隣接歯との色調調和を自然に見せる効果があります。前歯は笑顔や会話の際に最も目立つため、この色調の自然さは審美性に直結します。

また、前歯の位置や角度に合わせて個別に形状をカスタマイズする「カスタムアバットメント」を製作することもあります。既製品より費用は高くなりますが、クラウンとの適合性や歯ぐきとの調和が向上し、より自然な仕上がりが得られます。これらの選択肢は、見た目の満足度や長期的な安定性を考えるうえで非常に重要です。

被せ物(クラウン)費用と素材の違い

被せ物(クラウン)は、見た目の印象や噛み心地を左右する部分であり、前歯インプラントの仕上がりを決定づける重要な要素です。素材や製作方法によって費用は大きく異なり、価格帯は10万〜20万円程度が目安です。

前歯のクラウンでは、特に審美性が重視されるため、自然な色調や透明感を再現できるオールセラミックジルコニアセラミックが多く選ばれます。ジルコニアは強度が高く、変色しにくいため長期間美しさを保てる一方、透明感ではセラミックに軍配が上がります。そのため、前歯ではジルコニアの強度とセラミックの審美性を組み合わせた「ジルコニアフレーム+セラミック築盛」タイプが特に人気です。

また、前歯は光の反射や隣接歯との調和が非常に重要なため、歯科技工士が患者様の口元を直接確認し、色合わせや形態修正を行うことがあります。こうしたカスタムメイドの工程は費用に上乗せされますが、自然で違和感のない仕上がりを得るためには欠かせません。

その他の費用(診断・型取り・仮歯)

前歯インプラント治療では、フィクスチャー・アバットメント・クラウン以外にも、さまざまな工程に付随する費用が発生します。これらは見た目や機能の精度に直結するため、省略できない重要なプロセスです。

まず、診断・検査費用があります。初診時には口腔内診査やレントゲン撮影、CT撮影を行い、骨量や骨質、周囲の歯ぐきの状態を詳細に把握します。これらの検査費用は5,000円〜3万円程度が相場です。前歯では特に審美性を重視するため、噛み合わせや唇の動きも考慮した詳細な分析が行われます。

次に、型取り(印象採得)費用があります。クラウンやアバットメントの精度を高めるため、シリコン印象材や光学スキャナーを使用する場合があり、これらの工程で数千円〜1万円程度かかります。

さらに、治療期間中に装着する**仮歯(プロビジョナルクラウン)**の費用も必要です。前歯では見た目を保ちつつ歯ぐきの形態を整える役割もあるため、奥歯よりも高精度な仮歯を使用することが多く、1〜3万円程度が一般的です。治療中も自然な見た目を維持できるだけでなく、最終クラウン装着後の審美性にも大きく影響します。

前歯インプラントの特徴と注意点

前歯のインプラント治療は、奥歯とは異なる特有の配慮が必要です。まず第一に、審美性の再現が重要な課題となります。前歯は会話や笑顔のときに最も目立つ位置にあり、隣接歯や歯ぐきとの色調・形態・質感の調和が仕上がりの満足度を左右します。そのため、人工歯の色合わせや歯ぐきの形態管理には高度な技術と経験が求められます。

さらに、前歯部は顎骨の厚みや密度が奥歯に比べて薄く、インプラント埋入のための骨量が不足していることも少なくありません。その場合は、骨造成(GBR)や歯肉移植などの追加処置が必要になり、治療期間や費用に影響します。

もう一つの特徴は、歯ぐきのラインの美しさを保つことです。前歯では、インプラント体と歯ぐきの位置関係がわずかにずれるだけで、不自然な印象になることがあります。そのため、仮歯の段階から歯ぐきの形を整える作業が行われることもあります。

また、奥歯に比べて咬合力は弱いものの、前歯は噛み切る動作や発音に大きく関わるため、人工歯の形態や角度、咬み合わせの調整も慎重に行う必要があります。こうした理由から、前歯のインプラントは奥歯よりも難易度が高く、治療経験の豊富な歯科医院を選ぶことが望まれます。

見た目の自然さを左右する要素

前歯インプラントの成否は、見た目の自然さに大きく左右されます。その自然さを決める要素は主に以下の3つです。

人工歯の色調と透明感
隣接歯との色合わせは、単に「同じ色」にするだけでは不十分です。天然歯は光の反射や透過によって微妙な色合いが変化します。そのため、セラミックやジルコニアの素材選び、技工士による色調調整が重要になります。

歯ぐきとの調和
歯と歯ぐきの境目(歯頸部)のラインや、歯ぐきのボリュームは、審美性に直結します。歯ぐきが下がると歯が長く見えたり、金属色が透けることがあります。これを防ぐため、歯肉移植や仮歯での形態調整を行うケースもあります。

歯並びとの一体感
1本だけ治療しても、周囲の歯との並びや傾きが合っていなければ不自然に見えます。咬み合わせの高さや角度を細かく調整し、隣接歯と一体感のある形態に仕上げることが求められます。

これらの要素を高いレベルで満たすためには、歯科技工士と歯科医師の連携が欠かせません。特に前歯では、技工士が直接立ち会い、色や形態を確認するケースも多く、これが追加費用の理由にもなります。

骨や歯茎の状態が費用に与える影響

前歯のインプラント治療では、骨や歯ぐきの状態がそのまま治療の難易度と費用に直結します。特に前歯部は顎骨が薄く、抜歯後の骨吸収も早いため、骨造成(GBR)や歯肉移植が必要になるケースが少なくありません。

骨量が不足している場合は、人工骨や自家骨を用いて骨幅や高さを増やす処置を行います。これによりインプラント体の安定性が確保されますが、費用は5万〜20万円程度追加されます。骨造成の種類や範囲によって価格差が大きく、特に前歯部では審美的なラインを保つために精密な処置が求められます。

歯ぐきの状態も重要です。歯肉が薄いと金属色が透けたり、クラウンとの境目が目立ちやすくなるため、歯肉移植や歯肉形成術で厚みや形を整えます。この場合も数万円〜10万円程度の追加費用が発生します。

さらに、骨や歯ぐきの状態は治療期間にも影響します。追加処置を行った場合、インプラント埋入までの待機期間や治癒期間が延びることがあり、その間の仮歯管理費用も加算されます。審美性と長期安定性を両立させるためには、こうした追加治療を惜しまないことが結果的に満足度の高い仕上がりにつながります。

長期安定のためのメンテナンス性

前歯のインプラントを長期間安定して使用するためには、治療後のメンテナンス性を高める設計と習慣が欠かせません。前歯は奥歯ほど強い咬合力はかかりませんが、見た目が非常に目立つため、わずかな変化やトラブルでも審美性に直結します。

まず重要なのは、清掃のしやすさです。インプラントと歯ぐきの境目には汚れが溜まりやすく、放置するとインプラント周囲炎を引き起こします。歯間ブラシやスーパーフロスなど、専用の清掃器具を使いやすい形態に設計することで、日々のケアが楽になります。

次に、噛み合わせの安定です。前歯のインプラントは噛み切る動作や発音に関与するため、治療後に噛み合わせが変化すると負担が偏る可能性があります。定期的な咬合チェックや微調整を行うことで、クラウンやアバットメントへの過剰な負担を防ぎます。

さらに、定期的なプロフェッショナルケアも必須です。3〜6か月ごとに歯科医院でクリーニングや咬合確認、歯ぐきの健康状態のチェックを受けることで、トラブルの早期発見と予防が可能になります。

前歯インプラントは「入れたら終わり」ではなく、長く美しさと機能を保つための継続的な管理が成功のカギとなります。

他の治療法との費用比較

前歯を失った場合、インプラント以外にもブリッジ部分入れ歯といった選択肢があります。それぞれ初期費用や治療期間、見た目、機能性、耐久性に違いがあり、費用だけで判断するのは危険です。

インプラントは35万〜60万円程度と初期費用は高めですが、周囲の健康な歯を削らずに独立して機能を回復でき、見た目も自然で長期的な安定性があります。一方、ブリッジは15万〜35万円程度で治療期間が短く、保険適用の可能性もありますが、支台となる健康な歯を大きく削る必要があります。部分入れ歯は数万円〜15万円程度と最も安価ですが、見た目や装着感に違和感があり、咀嚼力も天然歯より低下します。

前歯は笑顔や会話で必ず目に入る部位のため、見た目の自然さをどこまで求めるかが治療法選びの大きなポイントになります。特に人前に出る機会が多い方や、長期的な機能維持を重視する方にはインプラントが有力な選択肢です。

インプラント vs ブリッジ(前歯の場合)

前歯のブリッジは、欠損部の両隣の歯を削って支台とし、その上に連結した人工歯を装着する治療法です。費用は15万〜35万円程度とインプラントより安価で、治療期間も短く済むのがメリットです。保険診療が可能な場合もあり、経済的負担を抑えたい方には魅力的な選択肢となります。

しかし、最大のデメリットは健康な隣接歯を削る必要があることです。削った歯は将来的に虫歯や歯髄炎のリスクが高まり、数年〜十数年後に再治療や抜歯が必要になる可能性があります。また、支台歯に負担が集中するため、その歯の寿命が短くなる傾向もあります。

審美性の面では、保険適用の前歯ブリッジではレジン(プラスチック)素材が使われるため、経年劣化による変色や摩耗が起こりやすくなります。自費のセラミックブリッジを選べば見た目は改善されますが、費用はインプラントと同等かそれ以上になることもあります。

前歯は見た目の印象に直結するため、周囲の歯を守りつつ自然な仕上がりを求める場合はインプラントが有利ですが、費用や治療期間を優先する場合はブリッジも検討対象になります。

インプラント vs 入れ歯(前歯の場合)

前歯の部分入れ歯は、欠損部分に人工歯を並べ、金属製または樹脂製のクラスプ(留め具)で隣接する歯に固定する取り外し式の補綴装置です。費用は数万円〜15万円程度と最も安価で、外科的処置を伴わず短期間で作製できるため、身体的負担や治療期間を抑えられるのがメリットです。

しかし、見た目や装着感の面ではインプラントに劣ります。特に金属クラスプが見える場合は審美性が損なわれ、人前での会話や笑顔に影響を与えることがあります。また、噛む力は天然歯の20〜30%程度にとどまり、硬い食べ物や粘り気のある食品を避ける必要が出ることもあります。

さらに、入れ歯は顎骨に直接咬合刺激が伝わらないため、骨吸収が進みやすく、数年ごとに作り替えや調整が必要になる傾向があります。前歯は目立つ位置にあるため、こうした骨吸収や歯ぐきの変化は見た目の違和感を増幅させる要因となります。

総合的に、見た目の自然さと長期的な機能性を重視する場合はインプラントが有利ですが、費用や外科手術への抵抗感が強い方には部分入れ歯も一時的な選択肢となり得ます。

奥歯1本インプラント費用との違い(内部リンク)

前歯と奥歯のインプラント治療費は、基本構造こそ同じですが、求められる条件や工程の違いから費用に差が出ます。奥歯のインプラントは強い咬合力に耐える設計が必要である一方、前歯のインプラントは審美性の再現がより重要視されます。そのため、前歯では色合わせや歯ぐきの形態調整、仮歯による歯肉形成など、奥歯にはない工程が追加されるケースが多く、結果として費用が高くなる傾向があります。

また、奥歯は骨幅や高さが比較的十分な場合が多いですが、前歯は骨が薄く骨造成(GBR)や歯肉移植が必要になることも少なくありません。こうした追加処置も費用差の要因となります。

奥歯のインプラント費用については、詳細を別記事で解説しています。素材や治療方法、費用相場を詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。

>>奥歯1本のインプラント費用相場と選び方(詳しくはこちら)

費用を左右する要因

前歯1本のインプラント治療費は、単に「1本いくら」という定額ではなく、治療計画や素材の選択、追加治療の有無など複数の要因が組み合わさって決まります。特に前歯は審美性と機能性の両立が求められるため、奥歯以上に個別性が高く、同じ1本でも総額に大きな差が出やすいのが特徴です。

費用に影響を与える主な要因は以下の通りです。

  • 使用するインプラントメーカーとシリーズのグレード
  • クラウンやアバットメントの素材(ジルコニア、セラミックなど)
  • 骨造成や歯肉移植などの追加外科処置の有無
  • 仮歯の精度や調整回数
  • 技工士立ち会いによる色合わせやカスタム製作の有無
  • 医院の設備や使用する手術ガイドシステムの種類
  • 担当医の経験や専門性

これらの要素は、治療後の見た目や耐久性に直結します。特に前歯の場合は「安さ」だけで選ぶと、色や形の違和感が残ったり、歯ぐきとの境目が不自然になる可能性があります。費用だけでなく、どこまで仕上がりにこだわるかを明確にし、その条件を満たせる医院を選ぶことが重要です。

素材・設計の選択肢

前歯のインプラント治療では、見た目と機能を高いレベルで両立させるために、使用する素材や設計方法の選択が重要です。これらの選択肢によって費用は大きく変動します。

1. クラウンの素材

  • オールセラミック:高い透明感と自然な色調再現が可能で、審美性重視の前歯に適しています。変色しにくい一方、強度はジルコニアよりやや劣ります。
  • ジルコニアセラミック:ジルコニアの強度とセラミックの審美性を組み合わせた構造。長期的な耐久性と自然な見た目を両立できます。
  • ジルコニア単体:非常に硬く耐摩耗性が高いですが、透明感はやや劣ります。

2. アバットメントの素材

  • ジルコニア製:歯ぐきから透ける金属色を防ぎ、自然な見た目を実現します。
  • チタン製+セラミックコーティング:耐久性を確保しつつ審美性も高められます。

3. 設計方法

  • 既製アバットメント:コストは抑えられますが、形態が既製のため適合性や審美性が劣る場合があります。
  • カスタムアバットメント:患者ごとの骨や歯ぐきの形態に合わせて製作するため、費用は高めですが適合性と審美性に優れます。

素材や設計の選択は、治療後の満足度に直結します。前歯は目立つ部位であるため、多少費用が上がっても審美性と適合性を重視する選択が望まれます。

骨造成・歯肉移植などの追加治療

前歯のインプラント治療では、骨や歯ぐきの状態によっては追加の外科処置が必要になることがあります。これらは治療の成功率や審美性を高めるために重要ですが、その分費用と期間が増加します。

1. 骨造成(GBR)
抜歯後の骨吸収や先天的な骨不足がある場合、人工骨や自家骨を用いて骨の幅や高さを増やします。前歯部は骨が薄いことが多く、審美的な仕上がりのためには骨造成が不可欠なケースも少なくありません。費用は5万〜20万円程度が目安です。

2. 上顎洞挙上術(サイナスリフト/ソケットリフト)
上顎の奥歯で行われることが多い処置ですが、前歯でも上顎洞に近接している場合は必要になることがあります。追加費用は5万〜15万円程度です。

3. 歯肉移植・歯肉形成術
歯ぐきが薄い、または退縮している場合は、歯肉を移植して厚みを増し、金属色の透けや歯頸部の不自然さを防ぎます。費用は3万〜10万円程度で、見た目の自然さと長期的な安定性に直結します。

これらの追加治療は、初診時の検査で必要性が判断されます。費用はかかりますが、最終的な仕上がりやインプラントの寿命を考えれば、適切な処置を組み込むことが結果的にコストパフォーマンスを高めます。

医院の技術や設備による差

前歯のインプラントは高度な審美性と精密な外科手技が求められるため、担当医の技術力や医院の設備によって仕上がりや費用が大きく変わります。

1. 医師の経験と専門性
前歯は骨や歯ぐきの状態が繊細で、奥歯よりも埋入位置や角度の誤差が仕上がりに直結します。経験豊富な医師は、審美性と機能性を両立させるための埋入位置や仮歯の活用方法、歯肉形成のタイミングなどを熟知しており、結果として長期的な安定性が高まります。その分、治療費がやや高く設定されることもあります。

2. 設備と治療システム
CT撮影機器や口腔内スキャナー、デジタルシミュレーションソフト、ガイドサージェリーなどの精密設備が整っている医院では、診断精度や手術の安全性が向上します。これらの設備投資は治療費に反映されますが、手術リスクや再治療の可能性を下げられるため、結果的にコストパフォーマンスが高くなる場合があります。

3. 技工士との連携体制
前歯では色や形態の再現性が重要なため、専属または提携の歯科技工士が直接立ち会い、色合わせや形態調整を行う医院もあります。このような体制は審美性の完成度を高めますが、技工士の人件費や製作時間が費用に反映されます。

費用の違いは単なる金額差ではなく、こうした技術・設備・連携体制の質によるものであり、仕上がりや長期安定性に直結します。

治療の流れと期間

前歯インプラントの治療は、見た目の自然さと機能性を両立させるため、奥歯よりも工程が多く繊細なステップを踏みます。全体の期間は症例によって異なりますが、骨造成や歯肉移植を伴わない場合でも約3〜6か月が目安です。追加処置が必要な場合は6か月〜1年程度かかることもあります。

治療の流れは大きく以下のステップに分かれます。

  1. 初診・診断・治療計画の立案
  2. 必要に応じた前処置(骨造成・歯周病治療など)
  3. インプラント埋入手術
  4. 治癒期間(オッセオインテグレーション)
  5. アバットメント装着と仮歯による歯肉形成
  6. 最終クラウンの装着と調整
  7. 定期的なメンテナンス

前歯では、治療中も見た目を損なわないために仮歯の装着がほぼ必須です。仮歯は単なる保護ではなく、歯ぐきの形態を整え、最終的なクラウンが自然に見えるための準備段階として重要な役割を果たします。

初診・診断・治療計画

前歯インプラント治療の第一歩は、精密な診断と綿密な治療計画の立案です。初診では口腔内診査のほか、CT撮影口腔内スキャナーによる3Dデータ取得を行い、骨の厚み・高さ・密度、歯ぐきの状態、隣接歯との位置関係を詳細に分析します。

前歯は審美性が求められる部位のため、単にインプラントを埋められるかどうかだけでなく、仕上がりのライン笑ったときの見え方まで考慮します。歯科技工士が診断段階から関わり、色調や形態の方向性を早い段階で決めるケースもあります。

また、この段階で必要な追加処置(骨造成、歯肉移植など)の有無や費用も明確にします。患者様のライフスタイルや治療期間の希望に合わせ、即時埋入・即時仮歯装着の可否も含めて計画を調整します。こうして初期の段階でゴールを共有することで、治療の仕上がりと満足度を大きく高めることができます。

手術と治癒期間

前歯のインプラント手術は、局所麻酔下で行われ、顎骨にインプラント本体(フィクスチャー)を埋入する工程です。骨の状態が良好な場合は1回法(手術1回でアバットメントも装着)や即時荷重(手術当日に仮歯を装着)が可能な場合もありますが、確実な安定を優先するために2回法(フィクスチャー埋入後に歯ぐきを閉じ、治癒後にアバットメント装着)を選択するケースが多くなります。

治癒期間は、骨とインプラントが結合する「オッセオインテグレーション」が完了するまで2〜4か月が目安です。ただし、骨造成や歯肉移植を行った場合は、結合期間を含めて4〜6か月以上かかることがあります。

この期間中、前歯の欠損部位が目立たないように高精度な仮歯を装着し、日常生活や見た目の不安を最小限に抑えます。仮歯は単なる見た目の補填だけでなく、歯ぐきの形態を整え、最終クラウン装着時に自然なラインを作る重要な役割を果たします。

被せ物の装着と最終調整

治癒期間が終了し、インプラントと骨の結合が確認できたら、アバットメントを装着し、その上に最終的な被せ物(クラウン)を取り付けます。前歯の場合、この工程は単に「歯を入れる」だけではなく、審美性と機能性を最終調整する重要なステップです。

まず、仮歯で整えた歯ぐきのラインに合わせてクラウンの形態や色調を微調整します。隣接歯との高さや幅、光の反射、透明感を合わせるために、歯科技工士が立ち会って色合わせを行うこともあります。特に前歯では、光の条件や口元の動きによって印象が変わるため、この段階での細かな調整が仕上がりを大きく左右します。

装着後は、噛み合わせの確認と微調整を行い、咀嚼時や発音時に違和感がないかをチェックします。その後、セメントで固定し、治療は完了です。ただし、ここからが長期安定のためのメンテナンスのスタートでもあります。定期的な検診とクリーニングを継続することで、美しさと機能を長く保つことができます。

まとめ:費用だけでなく仕上がりと長期性を重視して選ぶ

前歯のインプラントは、見た目と機能の両方を回復できる優れた治療法ですが、費用は35万〜60万円程度と高額になる傾向があります。その理由は、奥歯以上に審美性が求められ、色合わせや歯ぐきの形態調整、骨造成・歯肉移植などの追加処置が必要になる場合が多いためです。

費用だけで判断すると、見た目の不自然さや長期的なトラブルにつながることがあります。素材や設計、医院の技術力、メンテナンス体制まで含めて総合的に検討することが、満足度の高い仕上がりを得るためのポイントです。

当院では、前歯インプラントの治療経験が豊富な院長が、精密な診断と高度な技術で、自然な見た目と長期的な安定性を両立した治療をご提供します。前歯の欠損でお悩みの方は、まずはカウンセリングで現在の状態と治療の選択肢についてご相談ください。

【執筆・監修者】

 院長:岩下太一(歯学博士)

帝塚山Smile Design Clinic(スマイルデザインクリニック)

院長:岩下太一(歯学博士)

ITI日本支部公認インプラントスペシャリスト認定医
オステムインプラントインストラクター 講師
日本審美歯科学会 認定医
他、所属学会、認定資格多数

充実した無料カウンセリング

充実した無料カウンセリング

初回費用は一切かかりません。安心してご相談ください。

当院では患者様に安心してインプラント治療を受けて頂くために、無料カウンセリングを充実させております。お口の中のお写真やレントゲン写真、場合によってはインプラントの骨を確認するためのCT撮影も無料で行います。もちろん、初回なので一切費用はかかりません。患者様に今のお口の状態を知って頂き、納得してインプラント治療を受けて頂くことが私たちの喜びです。

ITIインプラントスペシャリスト認定医

ITIインプラントスペシャリスト認定医

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帝塚山スマイルデザインクリニックの院長はインプラント治療を他の歯科医師に教えるインストラクターの指導的立場として歯科界に貢献しております。また世界的に有名なインプラント学術団体のITI(International Team for Implantology)の日本支部公認インプラントスペシャリストの認定医でもあります。他院で難しいと言われたインプラント治療でも当院では十分に対応できる技術があります。

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