「インプラント治療を受けたあと、どんな歯磨き粉を使えばいいのか分からない」
そんなお悩みを持つ方は、当院の患者さまの中でも決して少なくありません。
インプラントは天然歯と構造や性質が異なるため、使う歯磨き粉の選び方によって、将来的な寿命や快適性に大きな差が生まれるのです。
特に近年は、「フッ素入りの歯磨き粉はインプラントに使っても大丈夫?」「コンクールって本当にいいの?」といったご質問が増えてきています。
市販の人気商品であるコンクールシリーズや、フッ素の安全性に対する疑問は、セルフケアの質を左右する重要なテーマです。
本記事では、以下のような観点から、インプラントに適した歯磨き粉の選び方を歯科医師の視点で丁寧に解説します。
- インプラントにおすすめの歯磨き粉の特徴と選び方
- フッ素は使っても大丈夫?安全な使い方とは
- 「コンクール」はインプラントに本当に向いているのか?
- 市販品と専用品の違いとは?
大阪でインプラント治療を専門的に行う帝塚山スマイルデザインクリニックが、長く快適に使い続けるためのホームケアの正解を、わかりやすくお届けします。
目次
インプラントに適した歯磨き粉とは?

インプラント治療後の口腔ケアでは、歯磨き粉の成分や使用感の選び方が非常に重要です。
インプラントはチタン製の人工歯根を骨に埋め込む治療のため、天然歯とは異なり虫歯にはなりません。
しかし、「インプラント周囲炎(しゅういえん)」と呼ばれる歯周病に似た病態は深刻なリスクであり、歯磨き粉の選択がその発症予防に直結します。
インプラント周囲炎を防ぐには、成分に注目
インプラントは虫歯にならないものの、その周囲の歯ぐきは非常にデリケートで、細菌が繁殖しやすい環境になることがあります。
そのため、以下のような目的をもった歯磨き粉を選ぶことが大切です。
- 抗菌・殺菌作用:プラーク(歯垢)の付着を抑え、炎症を防ぐ
- 低刺激:研磨剤や発泡剤による粘膜刺激を避ける
- 清掃性:長時間のブラッシングに適したテクスチャーや泡立ちの少なさ
つまり、「インプラントにはどんな歯磨き粉でも使える」というわけではなく、インプラント特有の環境に適した成分設計が求められるのです。
注目すべき3つのポイント
① 研磨剤は控えめ、または無配合
強い研磨力は、人工歯(上部構造)の表面を傷つけたり、インプラント周囲の粘膜に負担をかけたりする原因になります。
インプラント治療を受けた方には、「低研磨」または「無研磨」と表示された製品が適しています。
② 発泡剤はできるだけ少ないものを
歯磨き粉の中には「ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)」などの強い発泡剤が含まれているものがありますが、これは粘膜刺激や口腔内の乾燥を引き起こすリスクがあります。
インプラントには、「低発泡」「ノンSLS」タイプの製品がおすすめです。
③ 抗菌成分(CPC、CHXなど)の有無
細菌の増殖を抑える成分としては、CPC(塩化セチルピリジニウム)やCHX(クロルヘキシジン)が有名です。
こうした成分は、インプラント周囲炎の予防や、プラークコントロールの強化に役立ちます。
インプラントには低研磨・低発泡の歯磨き粉がおすすめ
インプラント周囲の粘膜は天然歯の歯肉とは異なり、ややデリケートな性質を持っています。そのため、研磨力の強すぎる歯磨き粉や、発泡成分が多く含まれる製品は、歯肉や粘膜に刺激を与え、かえって炎症を引き起こす可能性があります。
特に市販の歯磨き粉の中には、美白効果や歯垢除去をうたって強い研磨剤を配合しているものもありますが、インプラントをされている方にはおすすめできません。代わりに、「低研磨」「低発泡」「無添加」といった表示がある製品や、歯科医院専売のケア用品を選ぶと安心です。
例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などの強い発泡剤が含まれていない製品であれば、ブラッシング中の泡立ちが控えめになり、丁寧な歯磨きがしやすくなります。また、刺激が少ない分、長時間のブラッシングや歯間ブラシ・フロスとの併用にも適しています。
医院専売品にこだわる必要はある?
市販の歯磨き粉の中にも、インプラントに適した製品は存在します。
一方で、歯科医院専売品の多くは、インプラントや歯周病リスクの高い方向けに設計されており、成分や設計に安心感があるのも事実です。
どちらを選ぶにしても重要なのは、「自分の口腔環境に合っているか」という視点です。当院では、歯磨き粉の選定についても患者様ごとの状態に応じてアドバイスを行っています。
フッ素入り歯磨き粉はインプラントにも使って大丈夫?

「フッ素入りの歯磨き粉をインプラントに使ってもいいのですか?」
この質問は、インプラント治療を受けた患者様から非常に多く寄せられるものの一つです。
結論から言えば、基本的にフッ素入りの歯磨き粉はインプラントにも使用可能です。
むしろ、天然歯が残っている方にとっては、虫歯予防の観点からフッ素を取り入れたほうが望ましいケースも多いのです。
フッ素は「虫歯予防」に重要な成分
フッ素は以下のような効果を持ち、天然歯を守るためには非常に有効な成分です。
- 歯の再石灰化を促進
- 酸に対する歯質の抵抗力を向上
- 虫歯の原因菌の活動を抑制
インプラント自体は虫歯になりませんが、インプラントの周囲には天然歯が残っていることが多く、虫歯リスクはゼロではありません。
したがって、虫歯予防目的でフッ素入り歯磨き粉を使うのはむしろ推奨されるケースが多いのです。
一部では「フッ素=NG」の声も。その理由は?
まれに、「インプラントにフッ素は使わないほうがいい」という情報を目にすることがあります。
これは、フッ素がチタン(金属)に影響を与えるという説に基づいています。
- フッ素濃度が極端に高い場合(5,000ppm以上)
- 長期間、同じ部位に過剰に使用した場合
- 酸性の環境とフッ素が組み合わさった場合
こうした条件下では、チタン表面に腐食が起こる可能性があるとされています。しかし、一般的な市販のフッ素濃度(950〜1,450ppm程度)であれば、ほとんどの専門家が「問題なし」と判断しています。
安全にフッ素を使用するためのポイント
市販のフッ素入り歯磨き粉を安全に使うためには、以下の点を意識すると安心です。
▷ フッ素入り歯磨き粉の使い方
- 高濃度製品(5,000ppm)を使用する場合は、必ず歯科医師の指導のもとで使用する
- 市販の通常濃度(950〜1,450ppm)であれば、基本的に問題なし
- 使用後は丁寧にうがいを行い、成分を残さないようにする
▷ 選ぶ際のポイント
- 「中性」または「弱アルカリ性」の製品を選ぶ(酸性は避ける)
- チタン表面にやさしい処方(無研磨・低発泡)の製品を選ぶ
当院の見解
帝塚山スマイルデザインクリニックでは、フッ素配合製品の使用を原則として「可」としつつも、濃度や使用方法に応じたアドバイスを個別に行っています。
とくに、天然歯が多く残っている方・虫歯リスクが高い方には、フッ素を取り入れたケアの方が望ましいと判断されるケースが大半です。
コンクールシリーズはインプラントにも適している?

「コンクールって、インプラントにも使っていいんですか?」
このご質問も、インプラント治療を終えた患者様からよく寄せられるものの一つです。
結論から言えば、コンクールシリーズはインプラント治療後のセルフケアにも非常に適した製品です。
特に「コンクールジェルコートF」と「コンクールF(うがい薬)」は、当院でも推奨することがあり、多くの患者様に愛用いただいています。
コンクールジェルコートFの特長
「コンクールジェルコートF」は、以下のような特徴を持ち、インプラントにもやさしい設計となっています。
▷ 低刺激・低発泡・無研磨
- 発泡剤・研磨剤不使用で、粘膜やインプラント周囲の組織への刺激を最小限に抑えます。
- 泡立ちが少ないため、丁寧なブラッシングに集中できるのも大きなメリットです。
▷ フッ素950ppm配合
- フッ素によって天然歯の虫歯予防を同時にサポートできます。
- 過剰な濃度ではなく、インプラントとのバランスも取れた設計です。
▷ クロルヘキシジン(CHX)配合
- 歯周病菌の増殖を抑える作用があり、インプラント周囲炎の予防にも期待できます。
コンクールF(うがい薬)の活用も効果的
「コンクールF」は、グルコン酸クロルヘキシジン(CHX)配合の洗口液であり、ブラッシング後の補助ケアとして非常に有効です。
- インプラント周囲の細菌環境を安定させる
- 抗菌効果が長く持続する(約12時間)
- 刺激が少なく、毎日の使用でも粘膜にやさしい
当院では、術後や歯ぐきに炎症傾向がある患者様に、コンクールFの使用をおすすめするケースが多く、定期メンテナンスでも効果を実感されています。
コンクールシリーズの総合的なメリット
特徴 | メリット |
---|---|
低刺激設計 | インプラント周囲の粘膜にやさしく、安心して使える |
フッ素配合(ジェルコート) | 天然歯の虫歯予防が同時に可能 |
抗菌作用(CHX) | インプラント周囲炎の予防に寄与 |
泡立ち・刺激が少ない | 長時間のブラッシングにも適している |
当院の評価
帝塚山スマイルデザインクリニックでは、コンクールシリーズを“市販品のなかでも非常にバランスが良い製品”として高く評価しています。
とくに、「何を使えばいいか迷う」「最初は無難なものを使いたい」という方には、最初の1本としてコンクールジェルコートFをおすすめすることも多いです。
ただし、どんなに優れた製品でも、適切なブラッシングと定期メンテナンスがあってこそ効果を最大限に発揮します。
あくまで“補助的な役割”として、正しいケア習慣と併用することが大切です。
インプラント専用歯磨き粉と市販品の違いとは?
インプラントを長持ちさせるためには、日々のセルフケアが非常に重要です。
そのなかでも、「どの歯磨き粉を使うか」は、人工歯や周囲の粘膜の健康に影響する重要な要素となります。
現在では、市販の歯磨き粉のなかにもインプラントに適した製品は存在しますが、“インプラント専用歯磨き粉”との間には明確な違いがあります。
市販品の特徴と注意点
市販の歯磨き粉は、幅広いユーザーに向けて開発されており、以下のような特性を持っています。
▷ 特徴
- 虫歯予防・ホワイトニング・口臭対策など、多目的な処方
- 発泡剤(SLS)・研磨剤・香料が多めに含まれている傾向
- 使用感や爽快感を重視した製品が多い
▷ インプラント治療後の注意点
- 研磨剤が強すぎると人工歯の表面に傷がつく
- 発泡剤の刺激がインプラント周囲の粘膜に負担をかける
- 見た目は良くても、実際には粘膜やチタンへの配慮がされていない製品も存在する
そのため、市販品を選ぶ場合は、「無研磨」「低発泡」「インプラント対応」などの表記を慎重に確認する必要があります。
インプラント専用歯磨き粉の特徴
一方、歯科医院などで取り扱われるインプラント専用歯磨き粉は、インプラント治療後の方に特化した設計がなされています。
▷ 主な特徴
- 無研磨または超微粒子レベルの研磨剤で人工歯にやさしい
- SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)などの刺激成分を不使用
- ジェルタイプ・クリームタイプで粘膜への密着性が高い
- CPC・CHXなどの抗菌成分を高濃度配合(周囲炎予防に特化)
- チタンへの影響を抑えたフッ素濃度調整がされている製品も
つまり、インプラントを「長く快適に使う」ことを前提に、素材・成分・使い心地が緻密に設計されているのです。
どちらを選ぶべきか?
結論としては、インプラント治療後の方には、できるだけインプラント専用またはそれに準じた製品を使用することをおすすめします。
ただし、市販品でも下記のような条件を満たすものは、代用可能です。
▷ 市販品を選ぶ際のチェックリスト
- 無研磨、または低研磨(記載あり)
- 発泡剤不使用、または低発泡(ノンSLS)
- フッ素濃度950〜1,450ppm(中性~弱アルカリ性)
- 「インプラントにやさしい」と明記されている or 歯科医推奨
当院のご提案
帝塚山スマイルデザインクリニックでは、患者さまの口腔状態やインプラント部位の状態に応じて、市販品と専用品の中から最適なケア製品をご提案しています。
「何を使えばいいか分からない」「いま使っている歯磨き粉は合っている?」と不安な方も、遠慮なくご相談ください。
まとめ:フッ素や市販製品も、選び方と使い方で差が出ます

インプラント治療の成功は、手術だけで完結するものではありません。
毎日のセルフケアが、インプラントの寿命と快適性を左右する重要なカギとなります。
歯磨き粉ひとつを取っても、研磨剤や発泡剤の種類、フッ素の濃度、抗菌成分の有無など、選ぶべきポイントは数多くあります。
特にインプラントを埋入したあとは、粘膜にやさしく、周囲炎を防ぐための成分設計がされた製品を選ぶことが不可欠です。
「フッ素入りは使っていいの?」「コンクールって本当に安全なの?」という疑問も多いですが、
結論としては、フッ素もコンクールも、正しく選び・正しく使えば、インプラントの維持に非常に有効です。
この記事でお伝えしたポイント
- フッ素入り歯磨き粉は、適切な濃度と使用方法であれば基本的に使用可能
- コンクールシリーズ(特にジェルコートF・F洗口液)はインプラントに非常に適した製品
- 無研磨・低発泡・抗菌成分配合の製品が理想的
- 専用品だけでなく、市販品でも条件を満たせば代用可能
- 大切なのは“製品選び”と“正しい使い方”を両立すること
帝塚山スマイルデザインクリニックでは、インプラント治療後のホームケアに関するアドバイスにも力を入れており、患者さま一人ひとりに合わせた製品選び・使い方のご提案を行っています。
「何を使えばいいか分からない」「使ってはいけない成分ってあるの?」
そんな不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
インプラントを長く快適に使い続けるための“正しいセルフケア”を、私たちがしっかりサポートいたします。
【執筆・監修者】

帝塚山Smile Design Clinic(スマイルデザインクリニック)
院長:岩下太一(歯学博士)
ITI日本支部公認インプラントスペシャリスト認定医
オステムインプラントインストラクター 講師
日本審美歯科学会 認定医
他、所属学会、認定資格多数
充実した無料カウンセリング

初回費用は一切かかりません。安心してご相談ください。
当院では患者様に安心してインプラント治療を受けて頂くために、無料カウンセリングを充実させております。お口の中のお写真やレントゲン写真、場合によってはインプラントの骨を確認するためのCT撮影も無料で行います。もちろん、初回なので一切費用はかかりません。患者様に今のお口の状態を知って頂き、納得してインプラント治療を受けて頂くことが私たちの喜びです。
ITIインプラントスペシャリスト認定医

~ 世界レベルのインプラント治療をあなたへ ~
帝塚山スマイルデザインクリニックの院長はインプラント治療を他の歯科医師に教えるインストラクターの指導的立場として歯科界に貢献しております。また世界的に有名なインプラント学術団体のITI(International Team for Implantology)の日本支部公認インプラントスペシャリストの認定医でもあります。他院で難しいと言われたインプラント治療でも当院では十分に対応できる技術があります。