治療までの経緯
患者様は、前歯のセラミックのやり直しを希望されて来院されました。もともと右上2番は欠損しており、ブリッジ形態で補綴されていましたが、今後の人生を考え、しっかり噛める状態にしたいとのご希望から、インプラント治療を希望されました。
診査の結果、欠損部の骨幅が不足しており、そのままではインプラント埋入が困難であるため、骨造成が必要であることをご説明しました。また、患者様は将来的な歯肉の痩せを非常に心配されており、その点も踏まえて、骨造成を伴うインプラント治療を希望されました。十分にご説明を行い、ご同意をいただいたうえで治療を進めることとなりました。
臨床例
インプラントシミュレーション

インプラントを所定の位置に埋入した際にどのぐらい骨が足りないかをシミュレーションしました。
骨幅は3.2㎜以下であり、インプラントを埋入すると骨からはみだしてしまいます。よって骨造成GBRを行った後にインプラント埋入する計画をたてました。
骨造成(GBR)

骨が細く、陥凹している部位に対して、骨造成(GBR)を行いました。インプラントを長期的に安定させるとともに、将来的な歯肉退縮を防ぐために、十分な骨量を確保しています。これにより、審美領域である前歯部においても、見た目の美しさと機能性の両立を図り、長期的に安定した結果を得ることが可能となります。
インプラント埋入

骨造成をして5ヶ月ほど治癒を待ちました。経過良好で骨もしっかりと硬化したので、インプラントを埋入し、その2ヶ月弱で仮歯、そして最終的なインプラントセラミックを装着しました。審美領域でしたが、周りの天然歯の歯肉のラインとボリュームもかわらず見た目は天然の歯とかわりません。
治療後の感想
インプラントは適切な位置に埋入され、周囲の歯とも良好に調和が取れたことで、患者様にはご満足いただくことができました。

また、患者様は以前よりメタルタトゥーによる歯肉の黒ずみを気にされており、あわせて改善したいとのご希望がありました。そのため、遊離歯肉移植術(FGG)を併用し、審美的な改善も行いました。
その結果、長年悩まれていた歯肉の黒ずみが改善されただけでなく、インプラント治療および骨造成も含めた包括的な治療により、機能面・審美面ともに大きく向上し、患者様には大変喜んでいただくことができました。
ドクターからのアドバイス
今回のケースのように、骨造成(GBR)や歯肉移植(遊離歯肉移植術:FGG)といった手技は「歯周外科」と呼ばれ、インプラント治療において非常に重要なスキルです。
歯周外科には、以下のようにさまざまな術式があります。
- 骨造成(GBR)
- サイナスリフト(上顎洞に対する大規模な骨造成)
- ソケットリフト(上顎洞に対する小規模な骨造成)
- 遊離歯肉移植術(FGG)
- 結合組織移植術(CTG)
- 歯肉弁根尖側移動術(APF)
- 根面被覆術 など
これらはいずれも、インプラント治療を安全かつ長期的に成功させるために欠かせない技術です。
しかしながら、このような高度な外科技術は、日本の歯科大学教育だけで十分に習得できるものではなく、卒業後に継続的な研鑽が必要となります。これらの術式を安定して行えるようになるには、一般的に10年以上の臨床経験が求められるとも言われており、国内外で専門的なトレーニングを積む歯科医師も少なくありません(当院院長もその一人です)。
インプラント治療は単独の処置ではなく、さまざまな治療技術の集大成です。だからこそ、確かな知識と経験を持つ歯科医師のもとで治療を受けることをおすすめいたします。
治療の詳細
| 年齢・性別 | 50代女性 |
|---|---|
| 主訴 | 右上の前歯のインプラント治療と黒い歯茎をどうにかしたい |
| 治療内容 | 右上前歯インプラント治療1本 前歯3本セラミック治療 |
| 費用 | インプラント44万円×1本 セラミック12万円×3本 |
| 治療期間 | 骨造成治癒期間5ヶ月 インプラント治療2ヶ月 |
| リスク・副作用 | 治療後はしっかりとメインテナンスを行わないと歯周病になる可能性があります。 |
【執筆・監修者】

帝塚山スマイルデザインクリニック 院長
岩下 太一(歯学博士)
15年以上インプラント治療に携わり、デジタル技術を活用した、身体への負担が少ないインプラント治療に取り組んでいます。北海道大学歯学部歯学科を卒業後、大阪大学大学院歯学研究科 博士課程を修了(歯学博士)。2019年に帝塚山スマイルデザインクリニックを開院しました。デジタル歯科学校では講師として、約5,000人の歯科医師・歯科関係者に治療を指導しています。
- ITI日本支部公認インプラントスペシャリスト 認定医
- インビザライン プラチナプロバイダー認定医
- 日本歯科審美学会 認定医
- 日本アンチエイジング歯科学会 認定医
- オステムインプラント インストラクター
- デジタル歯科学校 講師
所属学会:日本口腔インプラント学会/日本補綴歯科学会/日本接着歯学会/ITI(International Team for Implantology)
本記事は、帝塚山スマイルデザインクリニック 院長・岩下 太一(歯学博士)が執筆・監修しています。記事の内容は学会や論文などの知見と当院での診療経験をもとにしていますが、症状や適切な治療方法には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。




