治療までの経緯
患者様は右上の奥歯が噛むと痛みがあり、他院でインプラントが必要だと言われ当院にこられました。その医院でも金属(チタン)のインプラントはされていたのですが、最近金属アレルギーが心配になっており、金属のアクセサリーも物によっては、赤みやかゆみが出るようになってきたそうです。チタンはアレルギーが出にくいことはご存知でしたが、これからの人生を考えた場合、体の中に金属を入れたくないとの判断でジルコニアインプラントを選択されました。
診断の結果、膿は大きく、骨が溶けており、骨造成が必要な状態でした。ジルコニアインプラントは通常の金属のインプラントよりも取り扱いが繊細であり、各段階を確実に治療していく必要があります。今回は抜歯・骨造成・インプラント埋入・治癒・最終セラミックセットとなり時間がかかることを説明し、患者様の了承のもと治療をスタートしました。
臨床例
治療の経緯
まず初めに行ったのは抜歯です。根先病巣が大きな歯牙を抜歯し周りの膿を掻爬し、完全に取り除きました。2ヶ月ほど歯肉の治癒を待った後、サイナスリフトを行いました。

サイナスリフトを行う前の骨は2.3ミリほどしかありませんでしたが、骨造成を行ったあとは17.3ミリほどに増加しました。

サイナスリフトとは上顎の頬部の空洞の粘膜を押し上げて骨造成を行う方法であり、難易度の高い歯周外科の一つの手技です。サイナスリフトを行ったあと、6ヶ月の骨硬化を待ちました。
ジルコニアインプラントの術式と注意点
ジルコニアインプラントを行う際は非常に慎重なドリリング操作が必要です。使用する最終的なバーもジルコニアバーを用いてインプラントの埋入する穴をドリルし、ジルコニアインプラントを所定の埋入トルク(力)で埋入していきます。

各ジルコニアインプラントのサイズのバーが並んでいます。

金属のメタルバーと比べると、ジルコニアバーは色も性質も全く異なります。体の中に可能なかぎり金属片を残さないように、このようなジルコニアバーを使用します。

ジルコニアインプラントは特殊な滅菌ケースに厳重に梱包され、海外から輸送されてきます。それらを取り出し、専用の器具の先に装着し、インプランターにて埋入していきます。

ジルコニアインプラントは1ピースタイプと2ピースタイプがありますが、極力1ピースタイプを使用します。なぜならば、強度が高く割れにくいからです。いくらジルコニアインプラントといえどもオーバーロードがかかれば破折のリスクは上がります。
今回は臼歯部で第一大臼歯部であり、歯牙の中で最も咬合力がかかる部位なので、1ピースを選択しました。
埋入手術


埋入自体はゆっくりと軸ブレに注意しながら行います。今回は元々の骨が約2ミリ、骨造成した骨が15ミリほどあり、埋入インプラントは少し太めの5ミリ、長さ10ミリのジルコニアインプラントを埋入しました。
治療終了
ジルコニアインプラントを埋入し、2ヶ月の治癒経過を経て、ペリオテスター(インプラントの生着度を測定する機器)の値が所定の値を上回ったのを確認し、最終的な被せ物(セラミック)のスキャン印象を行い、セラミックをセットしました。
患者様は噛み心地も問題なくよく噛め、金属アレルギーの心配もないので大変喜ばれていました。今はメインテナンスに通院され、全く問題なく噛めています。

ジルコニアインプラントはレントゲンでは真っ白に写ってきます。

ジルコニアインプラントにさらにセラミックの被せ物をするので、骨の中からすべてセラミックによる治療が可能であり、金属アレルギーの心配はありません。

ドクターからのアドバイス
ジルコニアインプラントを扱っているメーカーは世界的に見ても限られており、日本国内で実際に導入しているクリニックもごく少数です。金属を使用しないため、金属アレルギーの心配が少ない唯一のインプラントであり、将来的なアレルギーが不安な方や、現在すでにアレルギー症状でお悩みの方にとっては、非常に有力な選択肢の一つといえます。
一方で、ジルコニアインプラントはその特性上、通常のチタンインプラント以上に繊細な取り扱いが求められます。特に、埋入方向や力のかかり方への十分な配慮が必要であり、適応症の見極めにも高い技術と経験が欠かせません。
そのため、ジルコニアインプラントを希望される場合は、通常のインプラント治療を高いレベルで行えることに加え、骨造成や歯肉移植などにも精通した、インプラント治療全般に卓越した歯科医師に相談されることをおすすめします。
当院でジルコニアインプラントを希望される方の特徴
- すでに金属アレルギーがあり、アクセサリー等の金属は使用していない方
- 金属(チタン)のインプラントを埋入し、具合が悪くなった方(その際は金属インプラントの撤去から行います)
- アレルギーが心配な方
- 体の中に金属を入れたくない方
そのような心配がある方は一度ご相談されると良いと思います。
治療の詳細
| 年齢・性別 | 40代女性 |
|---|---|
| 主訴 | 金属(チタン)ではなくジルコニアインプラントを入れて欲しい |
| 治療内容 | 奥歯1本のジルコニアインプラントと天然歯のセラミック治療 |
| 費用 | 約90万円(海外輸入商品と輸送料により為替や世界情勢によって変動します) |
| 治療期間 | 3ヶ月(骨造成は別で6ヶ月) |
| リスク・副作用 | 治療後はしっかりとメインテナンスを行う必要があります。ジルコニアインプラントはプラークの付着は少ないですが、噛み合わせ調整はより厳密に行う必要があります。 |
ジルコニアインプラントの専門サイトがございますので、ご興味がある方は下記もご覧ください。

【執筆・監修者】

帝塚山Smile Design Clinic(スマイルデザインクリニック)
院長:岩下太一(歯学博士)
ITI日本支部公認インプラントスペシャリスト認定医
オステムインプラントインストラクター 講師
他、所属学会、認定資格多数
当院の院長はインプラント治療を他の歯科医師に教えるインストラクターの指導的立場として歯科界に貢献しております。また世界的に有名なインプラント学術団体ITIのインプラントスペシャリストの認定医でもあります。他院で難しいと言われたインプラント治療でもインプラント大阪では十分に対応できる技術があります。
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